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平成22年新司法試験知財法(特許法)
第1 設問1
1 甲による単独請求の可否
 特許法には、共有にかかる特許権の権利行使につき明文の規定がないため(著作権法117条参照)、甲単独で請求できるかが問題になる。
 単独で差止請求を行ったとしても、他の共有社に不利益を与えず、むしろ保存行為(民法252条ただし書)として有益である。
 よって、甲は単独で差止請求できる(特許法100条1項。以下、条数のみ示す。)。

2 均等侵害
(1) 問題の所在
 特許権の効力はクレームの範囲内にのみ及ぶ(70条)。本件では、イ号製品の構成要件b'は発明αの構成要件Bを充足せず、文言上は侵害不成立とも思えるため、問題になる。
(2) 均等侵害
 判例は、クレームに記載された構成要件と異なる部分があっても、構成が技術的に均等といえるものには特許権の効力が及ぶとする。
 その要件は、(1)非本質的部分性、(2)置換可能性、(3)侵害時における置換容易性、(4)出願時公知技術への非拡張、(5)禁反言など特段の事情の不存在、である。
 (4)出願時公知技術への非拡張を要するのは、特許権者が出願していたとしても、特許権を取得することができなかった技術については、均等侵害を成立させることが不当だからである。そうだとすれば、被疑侵害製品の構成が拡大先願(29条の2)にあたり、特許を受ける受けることができない場合も、均等侵害は不成立とすべきである。
(3) 具体的判断
 ab'cの構成は、たしかに出願時において公知技術と同一または置換が容易であったとはいえない。しかし、同構成は、出願時以前に戊によって特許出願されており、明細書に記載されている。そのため、拡大先願に該当する。
 よって、ab'cの構成は、甲乙が特許を受けることができなかったのであるから、(4)出願時公知技術への非拡張の要件を充足せず、均等侵害は不成立である。
 したがって、特許権の侵害はなく、甲の差止請求は認められない。

第2 設問2
1 問題の所在
 ロ号製品・ハ号製品の技術的範囲は、abc'であり、α発明のクレームの範囲と異なるため、文言侵害は成立せず、均等侵害の成否が問題となる。

2 均等侵害
 均等侵害の要件は前述のとおりである。

3 具体的判断
(1) 丙に対する請求
 (3)侵害時における置換容易についてみると、ロ号製品の製造販売開始時においては、構成要件Cをc'に置換することを容易に想到できたとはいえない。
 よって、要件を充足せず、均等侵害は不成立であるから、特許権の侵害はない。
 したがって、甲の丙に対する差止請求は認められない。
(2) 丁に対する請求
 他方、ロ号製品を解析することにより、abc'の構成は格別の困難もなく知ることができた。そのため、ハ号製品の製造販売開始時において、構成要件Cをc'に置換することを容易に想到できたといえる。よって、置換容易性の要件を充足する。
 また、ハ号製品はα発明と同一の作用効果をもたらすから、(1)非本質的部分性及び(2)置換可能性を充足する。さらに、(4)出願時公知技術への非拡張、(5)禁反言など特段の事情の不存在を伺わせる事情は存在しない。
 よって、均等侵害が成立し、特許権の侵害があるから、甲の丁に対する差止請求は認められる。

第3 設問3
1 問題の所在
 丁によるハ号製品の製造販売については、均等侵害が成立する。しかし、ハ号製品が特許権を共有する乙に納入されているため、問題になる。

2 共有者の自己実施
 73条2項は、契約で別段の定めをした場合を除き、特許権の共有者は他の共有者の同意を得ずに特許発明を実施できるとしている。
 共有者が自己実施能力を有しているとは限らないから、発明の実施行為を外部委託することも想定できる。よって、第三者による実施であっても、共有者の実施行為と同視できる場合はある。そのような場合は、権利侵害とならない。
 ただし、共有者間の特段の定めがある場合には、同意なき自己実施を禁じられていることになる。
 しかし、共有者間の債権的効力を第三者に及ぼすのは、取引安全を害して妥当でない。よって、第三者が特段の定めにつき悪意である場合を除き、委託された第三者の実施行為は権利侵害に該当しない。

3 具体的判断
 本件では、丁の製造行為は乙の依頼によるものであり、丁は製造したハ号製品をすべて乙に納入している。よって、乙の実施行為と同視できる。
 したがって、共有者間に特段の定めがない場合、丁の権利侵害行為はなく、差止請求は認められない。
 さらに、共有者間に特段の定めがある場合であっても、丁が甲乙間の合意について悪意であるとの事情はないから、権利侵害はなく、差止請求は認められない。
以上




【備考】
時間 1.5h
枚数 4.0p


・均等論
再び登場した均等論です。規範を導く理由付けは時間と紙面の都合上書けませんでしたが、一言あった方が良いでしょう。
また、文言侵害にあたらないが、例外として均等侵害が問題になるという原則例外図式を意識した論述が必要になってくると思います(どうしても原則論の方を落としてしまいがちですが)。

・設問1 第4要件
均等論の第4要件の充足について、拡大先願とのからみが問題となっています。
初見時は拡大先願の条文を落として、事実摘示だけで終わってしまいました…。今回は指摘してあります。

・設問2 第3要件
判断基準時は要件のなかに入れ込んでしまいましたが、本来であれば趣旨から論じるべきです。あと、事実認定もいまいち甘いですね。

・設問3 共有関係
せっかく場合分けしたので、結論を変えても良かったのですが、一応同じ帰結にしました。
このへんは論点さえおさえておけば、結論はどちらでも構わないタイプ、でしょうか。
過去問検討 * 22:50 * comments(0) * trackbacks(0)
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平成22年新司法試験知財法(著作権法)
第1 設問1
1 Aの権利
 AのBに対する請求を検討する前提として、まずは、著作権法上Aがいかなる権利を有するか確認する。
 本件αプログラムを作成したのは、Aの従業員である。しかし、・船廛蹈哀薀爐虜鄒は本件契約を前提としたAの発意に基づくものであり、CはAの従業員としてAの職務に従事し、その職務上αプログラムを作成したといえる。よって、Cを著作者とするような勤務規則等が見受けられない本問においては、αプログラムの著作者はAであるといえる(著作権法15条2項。以下、条数のみの引用は同法を示す。)。
 したがって、Aはαプログラムにかかる著作権及び著作者人格権を有していたといえる。

2 Aの主張
(1) 著作権に基づく請求
ア 問題の所在
 Bはα製品を造るためαプログラムを複製し、販売のため譲渡し、また、従業員EをしてAに無断でαプログラムを改変しβプログラムを作成している。
 これらの行為のうち、複製及び譲渡は問題とならない。なぜなら、BはAが開発するプログラムの著作権すべてにつき譲渡(60条1項参照)を受ける旨の契約を締結しており、複製権(21条)・譲渡権(26条の2第1項)の侵害にはならないからである。
 しかし、翻案権(27条)及び二次的著作物の利用に関する権利(28条)については、61条2項が「特掲されていないときは…留保されたものと推定する」としていることから、別途問題になる。

イ 61条2項にいう「特掲」
 61条2項は、著作者の保護を趣旨としている。つまり、27条及び28条の権利については、他の支分権と比較して、契約締結時に経済的影響を予測することが困難であることを考慮している。よって、著作権譲渡契約により直ちに全権利が対象となるわけではなく、27条・28条の権利については具体的に示されなければ対象とならない。すなわち、「すべて譲渡する」というような包括的文言では「特掲」があるとはいえない。

ウ 本問において「特掲」がないこと
 これを本件契約についてみると、「Aが開発するプログラムについてのすべての著作権」を譲渡する旨しか示されておらず、27条及び28条の権利については特に言及されていない。よって、61条2項にいう「特掲」がなく、BはAから27条及び28条の権利を譲り受けていないことになる。
 したがって、αプログラムを改変しβプログラムを作成した行為は、Aの有する翻案権及び二次的著作物の利用に関する権利を侵害する。

エ 救済
 以上より、AはBに対し、差止請求(112条2項)としてβプログラムの削除請求及び不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条・著作権法114条)ができる。

(2) 著作者人格権に基づく請求
ア 公表権侵害
 αプログラムはα製品のために作成されたものと認められる。よって、本件契約締結時にαプログラムのBによる公表は予定されていたといえるので、公表権(18条1項1号前段)はない。
 しかし、βプログラムにかかる公表権(18条1項1号後段)については、本件契約において翻案物の作成が予定されていない以上、同意があるとはいえないので、Aの公表権を侵害する。よって、AはBに対し、損害賠償請求(民法709条・民法710条)ができる。

イ 氏名表示権侵害
 αプログラムにかかる氏名表示権(19条1項前段)につき、AはBを著作者名として表示することに同意している。
 しかし、βプログラムにかかる氏名表示権(同項後段)については、やはりBを著作者として表示するとの同意はないといえる。よって、AはBに対し、βプログラムの原著作物の著作者として自己の氏名を表示するよう請求できる(19条1項・115条)。また、損害賠償請求(民法709条・民法710条)もなしうる。

ウ 同一性保持権侵害
 βプログラムはαプログラムを改変したものであり、本件契約において翻案物の作成が予定されていない以上、かかる改変に同意があるとはいえない。よって、BはAの同一保持権を侵害しているといえる。
 したがって、AはBに対し、差止請求(112条2項)としてβプログラムの削除請求及び損害賠償請求(民法709条・民法710条)ができる。

第2 設問2
1 結論
 Aは、Fに対して、差止請求(112条1項)をするために、β製品がプログラムの著作物の著作権を侵害する行為によって作成された複製物を含むことを前提に、Fの業務上の利用行為が当該著作権を侵害する行為とみなされる(113条2項)と主張する。

2 知情要件
 上記主張をするにあたって問題となるのが、知情要件である。
 本件では、プログラムの著作物にかかる権利が問題となっている。よって、その知情要件は、Fがβ製品を購入した時点で判断しなければならないが(113条2項)、FがBの子会社であるというだけでは「情を知っていた」ということはできないと考えられる。
 そこで、Aとしては、FがBを介して本件契約の存在を知っていたことを主張・立証し、β製品中のβプログラムがAのαプログラムにかかる権利を侵害する行為により作成されたことも知っていたと主張することになる。

第3 設問3
1 問題の所在
 BはDに対し、プログラムの貸与権(26条の3)侵害を根拠として、賃貸の差止め(112条1項)、製品αの廃棄(同2項)、損害賠償請求(民法709条・著作権法114条)をしうるように見える。
 しかし、このような請求を認めると、製品の流通を阻害し、取引安全を害することになりかねないため、問題となる。

2 「複製物の貸与」
 そこで、製品に組み込まれたプログラムの著作物が製品の効用を得るための本質的役割を果たしている場合に限り、26条の3にいう「複製物の貸与」にあたるとの解釈をとる。このように限定すれば、流通を阻害するおそれは小さくなる。
 これを本件についてみると、αプログラムがα製品の効用を得るための本質的役割を果たしているか、必ずしも明らかでないが、もし肯定できるのであれば、上述の請求は認められる。
以上



【備考】
時間 1.5h
枚数 3.6p

・プログラムの著作物
本件では、プログラムの著作物が問題となっています。プログラムの著作物は、美術とか音楽の著作物とは別の条項建てになっていることも多いので、適用条文に注意です。
おそらく受験生の多くは、こんな条文をはじめて引いたという感じだったのではないでしょうか。現場でプログラムの著作物にかかる規定を引けるかどうかも、試されているのだろうと推測します。でもやっぱり動揺しますよね。

・設問1 職務著作の成立
紙面が少し余るくらいだったので、職務著作の部分も規範を立ててからあてはめをするという王道スタイルにすれば良かったなと思います。冒頭ですし、その方が印象が良かったかも。

・設問1 著作者人格権の不行使特約
一身専属性との関係で、著作者人格権の不行使特約が無効ではないかという論点にも触れておけば、加点要素だったかもしれません。

・設問2 みなし侵害
予想外に短い記述に留まってしまいました…。いいのかこんなんで(強いて言えば、113条1項各号と113条2項の判断時点の違いを強調して、わかってますよアピールをするとか…?)。
出題趣旨を見る限りでは外していなさそうですが、私が気付いていないだけで、ほかに書くべきことがあるのではないかという気もします。

・設問3 貸与権の消尽?
この答案では、「効用を得るための本質的役割」という「商標的使用」ならぬ「著作権的使用」に似た概念を導入して貸与権侵害を否定しています。この構成のほかに、譲渡権の消尽(26条の2第2項1号)の趣旨を引いて、それを貸与権にも類推適用するというアプローチも考えられます。
たぶん設問3は、問題点に気付ければ良いというような問題だと思うので、どちらでも良いのではないでしょうか。
ただ、消尽理論の類推適用の方が理由付けもたくさん論じられるし、答案として書きやすかったのではないかと今は思います。
過去問検討 * 23:50 * comments(0) * trackbacks(0)
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平成18年新司法試験知財法(著作権法)
第1 甲の丙に対する主張
1 甲がβの著作者であること
(1) 問題の所在
 写真βは、甲が写真構図、採光、露光、シャッタースピード等を決めて撮影しており、創作性が認められる。よって、βは写真の著作物(著作権法10条1項8号。以下、条数のみの引用は同法を示す。)である。
 しかし、甲がβを作成する際に出版社Aから依頼を受けている。そのため、Aが丙に対してβも含むすべての写真原盤を譲渡していることとの関係で、職務著作(15条1項)の成否が問題になる。
(2) 職務著作の不成立
 βの作成は、Aの発意の基づくものとはいえ、甲A間に雇用関係はなく、また撮影にあたって甲はAから指揮監督を受けたわけではない。
 よって、職務著作は成立せず、βの著作者は甲であるといえる。
(3) したがって、甲はβにかかる著作者及び著作者人格権を有する。

2 著作権に基づく主張
(1) 複製権侵害
 丙は、自社カレンダー用の写真としてβを利用している。かかる利用は有形的再製(2条1項15号)にあたり、甲の複製権(21条)を侵害する。
 そこで、甲は丙に対し、本件カレンダーの廃棄請求(112条2項)及び不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条・著作権法114条)をすることができる。
(2) 譲渡権侵害
 また、本件カレンダーの配布行為は、βにかかる甲の譲渡権(26条の2)を侵害する。
 よって、甲は丙に対し、本件カレンダーの配布差止請求(112条1項)、または、すでに配布された分については、不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条・著作権法114条)ができる。

3 著作者人格権に基づく主張
(1) 同一性保持権侵害
 丙はβにトリミングをして無断で変形している。これは、丙のカレンダー使用に合わせるためであり、「やむを得ない」(20条2項4号)ともいえないから、同一性保持権(20条1項)の侵害にあたる。
 よって、甲は丙に対し、本件カレンダーの廃棄請求(112条2項)及び損害賠償請求(民法709条・民法710条)ができる。
(2) 公表権の非侵害
 なお、βは本件カレンダー作成前に、甲の同意の下、美術雑誌上で公表されている。よって、公表権(18条1項)については問題とならない。
(3) 氏名表示権の非侵害
 また、氏名表示権(19条1項)についてであるが、Aの美術雑誌に掲載された際には契約により甲の氏名は表示されていなかった。19条2項は、すでになされた表示に従って著作者名を表示することができるとしているが、同項の趣旨を類推すれば、無名著作物として公表された著作物についても無名のまま利用することが許される。
 よって、本件でも、19条2項の類推適用により丙は撮影者を表示せずに著作物を利用できたといえる。したがって、氏名表示権の侵害はない。
 ただし、今後配布するカレンダーにつき氏名表示を求めることは可能であると考える。なぜなら、19条2項の趣旨は、利用者の便宜を図るものであるところ、著作者の「別段の意思表示」を知ったのであれば、かかる意思を尊重すべきだからである。

第2 乙の丙に対する主張
1 乙がαの著作者であること
(1) 問題の所在
 文楽人形αは、人形細工師乙が製作した人形浄瑠璃に用いられる応用美術である。応用美術の著作物性については、意匠法との競合という点から問題となりうる。
(2) 応用美術の著作物性
しかし、応用美術であっても、その美的特性が著作権法上保護に値する場合は「美術の著作物」(10条1項4号)として良いと考える。このように解することは、2条2項が美術の著作物に美術工芸品を含むと定めていることも合致する。
 本件では、αが乙の新作であること、文楽人形は一般に文化的に高い価値の美的特性を備えていると考えられることから、αに著作物性を認めるべきと考える。
 よって、乙はαにかかる著作権及び著作者人格権を有する。

2 乙もβにかかる権利を有すること
 乙は、βの作成に際してαのポーズを決めただけでβに対して独自の創作的関与を行っていない。そのため、共同著作者であるとはいえない。
 しかし、βはαを被写体とする写真の著作物であることから、βはαを変形した二次的著作物(2条1項1号)であるといえる。
 よって、乙は二次的著作物の原著作者として、βについて甲と同一の種類の権利を有する(28条)。また、著作者人格権についても、甲と同様の権利を有するものと考えられる(18条1項後段・19条1項後段・20条1項参照)。

3 著作権に基づく主張
 乙は丙に対して、甲と同様に、複製権(21条、28条)侵害を理由とする本件カレンダーの廃棄請求(112条2項)及び損害賠償請求(民法709条・著作権法114条)をすることができる。
 また、譲渡権(26条の2、28条)侵害を理由とする本件カレンダーの配布差止請求(112条1項)または損害賠償請求(民法709条・著作権法114条)をすることができる。

4 著作者人格権に基づく主張
(1) 氏名表示権侵害
 丙が本件カレンダーに乙の氏名を表示したものとは認められない。そのため、乙は丙に対しカレンダー配布に際して自己の氏名を表示するよう請求できる(19条1項・115条)。また、損害賠償請求(民法709条・民法710条)もなしうる。
 乙の場合は、美術雑誌掲載時に乙の紹介記事がβに添えられていたことから、甲とは異なり、著作者名の表示があったものと考えられる。よって、甲と乙で結論を異にすることに問題は無い。
(2) 公表権の非侵害
 βの美術雑誌上の公表につき、乙は、甲と同様に同意している。よって、公表権侵害はない。
(3) 同一性保持権侵害
 本件カレンダーは、βにトリミングを加えて作成されているため、乙の意に反して改変があったといえる。よって、乙は丙に対し、本件カレンダーの廃棄請求(112条2項)及び損害賠償請求(民法709条・民法709条)
以上




【備考】
時間 1.5h
枚数 3.9p


・主として条文操作
平成18年も、平成19年と同様に、基本的に条文を聞いているだけだと思います。応用美術の著作物性のところだけが論点といえば論点でしょうか。

・甲の丙に対する廃棄請求
この答案では、廃棄請求と書いて112条2項を引いていますが、「差止請求(112条2項)として本件カレンダーの廃棄を求める」などとした方が、誤解されずに済みます。

・甲の氏名表示権
答案では、無名著作物にかかる19条2項の類推適用として処理しています。しかし、甲は、原作品の氏名非表示につき同意していますが、その複製物である本件カレンダーについては同意していないので、「その著作物の公衆への提供若しくは提示に際し」に該当するという方向でも良かったかなと感じています。

・応用美術
文楽人形が「美術の著作物」と言えるかがまず問題になります。
また、答案で「その美的特性が著作権法上保護に値する場合は「美術の著作物」(10条1項4号)として良い」となっていますが、理由付けになっていません。ここは「高度の創作性が認められれば、著作権法上保護される」とすべきでした。
過去問検討 * 22:20 * comments(0) * trackbacks(0)
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平成19年新司法試験知財法(著作権法)
第1 設問1
1 結論
 乙は、甲及び丙の承諾を必要とする。以下、その理由を論じる。

2 Bの性質
(1) 二次的著作物
 脚本Bは、小説Aを脚色(著作権法27条。以下、条数のみの引用は同法を示す。)して創作されているため、Aの二次的著作物である。
 そして、一般に、二次的著作物の原著作物の著作者は、28条により、二次的著作物の利用にかかる権利を有する。よって、原著作物の著作者たる甲は、乙と同一の種類の権利を有する。
(2) 共同著作物
 また、Bは、乙と丙が共同して執筆したものである。乙と丙の創作的寄与は、Bにおいて不可分一体となっていると考えられるから、Bは乙と丙の共同著作物であるといえる。
 一般に、共同著作物の行使にあたっては、共有者全員の合意を得なければならない(65条2項)。よって、乙がBの著作権を行使する場合には、共有者たる丙の合意を得なければならない。

3 許諾の必要性
 本件において、乙は、Bに基づいて演劇Eを上演させ、Eを録音録画し、DVDで販売することを検討している。これら各行為は、Bの(製権(21条・2条1項15号イ)、∧製権(21条)、譲渡権(26条の2第1項)にかかる利用である。
 よって、各行為をなすにあたり、乙は原著作物の著作者たる甲及び共同著作者たる丙の承諾を得る必要がある。

第2 設問2
1 結論
 甲は、丁に対して、損害賠償請求(民法709条)をすることができる。以下、詳細について論じる。

2 権利侵害
(1) CがAの複製であること
 丁が執筆した小説Cは、舞台・主人公を外国から日本に変えているものの、ストーリー展開及び登場人物の性格設定は、Aと同様である。よって、丁による新たな創作性の付与は認められない。すなわち、CはAを改変してはいるものの、複製にすぎない。
(2) 口述権の非侵害
 丁は、Aを改変し私的に複製した小説Cを朗読しているため、甲の口述権(24条)を侵害しているようにも見える。
 しかし、一般に、 ̄塚を目的とせず、聴衆から料金を受けないで、8表された著作物を口述する場合には、著作権の行使が制限される(38条1項)。
 本件では、丁が、.椒薀鵐謄ア目的で、¬砧舛力読会において、出版により公表済みのAの複製たるCについて口述している。よって、丁による口述は権利制限に該当し、口述権侵害にはあたらない。
(3) 複製権侵害
 しかし、丁は上記の口述によりAの複製物を公衆に提供したといえる。そのため、私的複製(30条1項)として適法ということはできない。つまり、家庭内利用の目的外使用によって、21条の複製を行ったものとみなされ(49条1項1号)、複製権侵害が成立する。

3 請求
 丁は出版されたAを複製しているため、侵害につき故意があるといえる。よって、甲は上記侵害を根拠として損害賠償請求ができる。なお、複製行為は既に修了しているため、差止請求はできないと考える。

第3 設問3
1 結論
 甲は、戊に対して、損害賠償請求(民法709条)及び小説Dのホームページ掲載につき差止請求(112条1項)ができる。以下、その理由について詳述する。

2 権利侵害
(1) DがAの二次的著作物であること
 DはAの登場人物をそのまま登場させているが、ストーリー展開はAと別である。しかし、Aの続編・後日談であるから、DにおいてもAの本質的特徴を直接感得できると考えられる。
 よって、DはAの二次的著作物である。したがって、Aの著作者たる甲は、28条を介してDの利用にかかる権利を有する。
(2) 複製権・公衆送信権の侵害
 戊は、Dをインターネット上に開設したホームページに掲載するため、サーバーにアップロードしていると考えられる。かかる行為は、甲の複製権(21条・28条)を侵害する。
 また、ホームページの掲載により、甲の公衆送信権(23条1項・28条)も侵害している。
(3) 翻案権侵害
 Dの翻案は、私的領域内における行為として、権利制限にかかっていたが(43条1項1号)、上記のホームページ掲載という目的外使用により、公衆に提供したといえる。よって、翻案を行ったものとみなされる(49条2項1号)。
 したがって、甲の翻案権を侵害する(27条・28条)。

3 請求
 戊は出版されたAを翻案しているため、侵害につき故意があるといえる。よって、甲は上述の権利侵害を根拠として、損害賠償請求ができる。
 また、ホームページに掲載され続ける限り、公衆送信権侵害が継続しているといえる。よって、掲載につき差止請求ができる。
以上



【備考】
時間 1.5h
枚数 3.6p


・条文操作のみ
平成19年は、基本的に条文を聞いているだけです。正しい条文操作ができれば、おそらく概ね解答できるだろうと思います。解釈が分かれうるところという意味での(狭義の)論点は特にないのではないでしょうか。

・設問2 複製?翻案?
この答案では、CをAの複製であると認定して論述しています。これは、答案作成方針上、設問3との差をつけたかったことと、38条1項にいう「公表された著作物」に翻案物が含まれるのかちょっと怪しいなと思ったので、複製としています。
ありえない認定とまではいえないと思いますが(単に地名や人名を改変しただけである場合など)、素直にとれば翻案な気もします。

・著作者人格権については書かない
平成19年の問題文冒頭で「なお,著作者人格権に関しては論じる必要はない。」としている点に注意。私は最初に答案を作ったときは見事にひっかかりました…。気をつけよう。
まあ著作者人格権について書くと泥沼だものね。
過去問検討 * 19:30 * comments(0) * trackbacks(0)
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平成20年新司法試験知財法(著作権法)
第1 設問1
1 著作権に基づく請求
 乙は、甲の許諾なく甲執筆の小説15編を選んで乙書籍を作成・出版している。これは、各小説にかかる甲の複製権(著作権法21条。以下、条数のみの引用は同法を示す。)及び譲渡権(26条の2第1項)の侵害にあたる。
 よって、甲は上記権利侵害を前提として、損害賠償請求(民法709条)ができる。

2 著作者人格権に基づく請求
(1) 同一性保持権侵害
 乙は、乙書籍の収録にあたって、甲の小説につき誤記と思われる送り仮名を変更し、また、数個の言葉を現代語に入れ替えている。かかる変更は無断で行われているから、著作者たる甲の意に反する改変であるといえる(20条1項)。
 なお、これらの改変は、誤記の修正や読みやすさを目的としたものであることから、「やむを得ない」改変(20条2項4号)に該当するかが問題となりうる。しかし、20条2項1号が用字又は用語の変更につき学校教育目的に限定していることに照らせば、一般向けである乙書籍において上記の用字・用語の変更をすることは許されない。
 よって、乙の行為は甲の同一保持権を侵害するといえ、甲は損害賠償請求(民法709条・民法710条)及び訂正請求(115条)ができる。
(2) 公表権の非侵害
 乙書籍収録の甲小説は、同人誌に掲載されたとはいえ、一般に流通したものではない。そこで、乙の出版行為が甲の公表権(18条)を侵害しているか否か、公表の有無が問題となる。
 一般に、発行されれば公表されたものとみなされるところ(4条1項)、「発行」とは、著作物の性質に応じ公衆の要求を満たすことができる相当程度の部数の複製物が作成・頒布されることをいう(3条1項)。
 本件では、人的結合を有するとはいえ、多数とみられるクラスメートに配布していることから、公衆(2条5項)の要求を満たす程度の部数が頒布されたといえる。よって、発行済みの小説は発表もされており、公表権侵害にはならない。
 したがって、かかる権利侵害を前提とする請求はできない。

第2 設問2
1 著作権に基づく請求
 丙は、甲小説を収録した乙書籍をもとに丙書籍を作成・出版している。かかる行為は、甲の複製権(21条)及び譲渡権(26条の2第1項)を侵害する。
 よって、甲は損害賠償請求権(民法709条)をすることができる。

2 著作者人格権に基づく請求
 丙は、同一生保事件を侵害する乙書籍を収録した丙書籍を作成・出版しているため、みなし侵害(113条1項2号)に該当するかが問題となる。
 本件のように、改変者と複製者が同一人でない場合には、一般に知情要件を充たさないと考えられる。よって、丙の予期せぬ侵害責任を追わせることはできず、みなし侵害にはあたらない。
 したがって、甲は著作者人格権に基づく請求はできない。

第3 設問3
 A市は、甲の小説が収録された乙書籍及び丙書籍を収蔵し、市民に貸し出している。そのため、貸与権(26条の3)侵害が問題となる。
 権利制限規定である38条4項は、仝表された著作物を、非営利目的、かつ、L欺で貸与する場合には、公衆に提供できるとしている。
 本件では、々辰18条1項後段により公表権を有するとしても、既に検討したとおり、乙・丙の出版により公表済みであるといえる。また、A市私立図書館は公共事業として本を貸し出していると考えられ、B于舛鯑世討い覆いら、38条4項に該当する。
 よって、貸与権侵害はなく、甲はA市に対して何ら請求することはできない。

第4 設問4
1 著作権に基づく請求
(1) 編集著作物
 乙は、甲執筆の小説30編から15編を選択している。かかる選択にあたっては、甲の文学的才能を示しているかという観点により選別しているから、選択に乙独自の創作性が認められる。また、15編の小説の配列についても、後の作品との関連性という観点から分類しているから、配列にも乙の創作性が肯定できる。
 よって、乙書籍は、「素材の選択」及び「素材の配列」によって創作性を有する編集著作物(12条1項)であるといえる。
(2) 権利侵害
 丙は、乙書籍収録小説を並び替えた丙書籍を作成・出版している。乙書籍は、素材の選択にも創作性があるのだから、同一の素材に基づく丙書籍は、乙の編集書作物の権利、すなわち、複製権(21条)及び譲渡権(26条の2第1項)を侵害する。
(3) よって、乙は丙に対し、損害賠償請求権(民法709条)をなしうる。

2 著作者人格権に基づく請求
(1) 氏名表示権侵害
 上述のように、丙書籍は乙書籍の複製であるにもかかわらず、編集著作権者乙の氏名を表示していない。よって、氏名表示権(19条1項)を侵害する。
 したがって、乙は丙に対し、損害賠償請求(民法709条、民法710条)及び名誉回復措置(115条)を求めることができる。
(2) 同一性保持権侵害
 また、丙書籍においては、乙書籍収録作品が並び替えられているから、同一性保持権(20条1項)を侵害しているといえる。
 よって、乙は丙に対し、損害賠償請求(民法709条、民法710条)ができる。
以上



【備考】
時間 1.5h
枚数 3.8p


・検討すべき項目が多い
平成20年は(平成21年に比べれば多少マシですが)書くべきことが多いです。それでも3行くらい余らせてしまったのは、構成段階で尺を読み間違えたからです。もったいないことをしました。
しかし、後述のように論点落としをしているので、それを考えればもう少しコンパクトにまとめる必要がありそうです。

・差止請求(112条)を検討し忘れている
設問1〜設問4まで、すべての項目で差止請求の可否も問題になりますが、全部落としてしまいました…。差止めは忘れてしまう傾向にあるので、答案構成段階で気をつけたいと思います。

・設問1 甲の乙に対する同一性保持権侵害の主張
この答案では、20条2項4号に該当しないとする理由として、20条2項1号との比較を行っています。これは、4号が包括的規定であることから、1〜3号と同程度の例外的場合に限定して解釈すべきとの立場を前提にしています。紙幅に余裕があったら、このことを指摘しておくと好印象かなと思います。
あと、1号については学校教育目的しか指摘しませんでしたが、正確には、権利制限+学校教育目的ですね。

・設問1 甲の乙に対する公表権侵害の主張
公表権に関する検討については、条文をしっかり摘示することを心掛けました。
ただ、「中田英寿卒業文集事件」を知らなければ、制限時間内で4条1項と3条1項に気付くのは難しいかなという印象を受けました。

・設問2 みなし侵害における知情要件
答案では、みなし侵害にはあたらないとしています。
素直に解釈すれば、口頭弁論集結時点で知情要件を充たしていることになりみなし侵害にあたるという結論になります。
しかし、この答案では、改変と複製を同一人が行っているならともかく、改変者と複製者が同一人でない場合にまでみなし侵害にあたるとすると、流通を阻害するおそれが大きいという問題意識のもと、知情要件を緩和する必要があるという判断をしています。
ここはもう少し厚く説明しないと、意図が伝わらないところではないかと反省。

・設問3 貸与権
ここは貸与権侵害と制限規定の関係のみを論じていますが、さらに、みなし侵害になるかどうかの検討も本来は必要だと思います。書き落としました…。

・設問4 編集著作権侵害
この答案では複製権侵害としていますが、翻案権侵害にした方が良いのではと指摘されました。
過去問検討 * 18:00 * comments(0) * trackbacks(0)
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平成20年新司法試験知財法(特許法)
設問1
第1 問題の所在
 甲乙による請求の当否判断にあたり、ー詑糧獣任箸靴董∧哉明が甲発明の技術的範囲に属するといえるか問題とな る。また、△修發修眄賤兌損楔△鮴瀋蠅靴親探権者甲が差止請求をする適格を有するのか、特許法68条ただし書(以下、条数のみの引用は同法を示す。)との関係で問題となる。

第2 請求の妥当性
1 技術的範囲に属すること
 一般に、ある発明の下位概念に相当する発明は、上位概念にあたる発明と包含関係にあるといえ、技術的範囲に属するといえる。
 本件では、特殊樹脂を傘生地に塗布して防水効果を得るという甲発明を上位概念として、同樹脂を特定温度で塗布することで防水効果だけでなくUVカットという異質な効果を得るという下位概念にあたる発明がされている。よって、丙発明は甲発明の技術的範囲に属するといえる。
 したがって、丙発明の実施は甲発明にかかる特許権の侵害にあたりうる。
2 差止請求の請求適格
 特許権者は差止請求権を有するのが原則であるが(100条1項)、68条ただし書は専用実施権者の実施範囲について特許権者の失権を規定している。
 しかし、文言上は差止請求権の行使が制限されていない。また、一般に特許権者には実施料収入の確保という観点から特許権侵害を停止させる利益があるといえ る。加えて、実施料が支払済みであるとしても、特許権者が契約終了後に実施することも考えられるから、差止請求権を認める実益がある。よって、特許権者の差止請求権行使を認めるべきである。
 これを本件についてみると、甲は乙から存続期間全部に対応する実施料全額を一括して支払われており、実施料 収入確保という利益は、丁の実施行為によって失われていないかに見える。しかし、甲は乙との専用実施権設定契約を解除し自ら実施することも考えられるか ら、その際の不利益を除くために権利行使を認める必要があるといえる。
 よって、甲は差止請求適格を有する。

第3 結論
 甲乙それぞれは、丙発明の実施によって甲発明を侵害する丁に対し、差止め(100条1項)及び損害賠償(民法709条)を請求できる。


設問2−1
第1 問題の所在
 特許無効審判請求は何人も請求できるのが原則である(123条2項)。しかし、丁は丙に特許権があるという信頼を前提に通常実施権設定契約を締結しているから、信義則上、丙発明の無効を主張できないとも考えられる。そのため、請求適格が問題となる。

第2 無効審判にかかる請求適格
 123条2項は、文言上、通常実施権者の無効審判請求を禁じていない。
  また、無効審判請求ができないとなると、実施権者は消滅すべき瑕疵ある特許権について実施料を支払い続けなくてはならないという不利益を負うことになる。 かかる負担を強いるのは酷であるから、当事者間で審判請求につき制限する特約のない限り、通常実施権者による無効審判請求は、信義則に反しない。

第3 結論
 よって、丁は丙発明の特許について、無効審判請求をすることができる。


設問2−2
第1 (1)について
1 特許無効の遡及効
 丙発明の特許を無効とする審決が確定すると、かかる特許権は、はじめから存在しなかったものとみなされる(125条)。
 そのため、丁は丙との通常実施権設定契約は錯誤により無効であり(民法95条)、丙は法律上の原因なく実施料を得ているとして不当利得返還請求(民法703条・704条)をすることが考えられる。
2 不当利得返還請求
 一般に、通常実施権設定契約を締結するのは、特許権を侵害せずに実施行為を行うためである。すなわち、当該契約は、特許権者が瑕疵のない特許権を有しているとの前提に基づく。
 そうであるとすれば、特許権に無効事由があるということは要素の錯誤にあたり、また、通常実施権者は契約を締結しなかったであろうといえる。
 よって、無効審決が確定した場合には、通常実施設権定契約における意思表示に錯誤があったといえる。
3 結論
 したがって、丁は、丙に対し、既払分の実施料相当額の返還を求めることができる。

第2 (2)について
 上述のとおり、丙発明の特許は遡及的に無効になるから、丙丁間の通常実施権設定契約は錯誤により無効であり、審決確定前の期間に対応する実施料であっても、法律上原因なく得た利益ということになる。
 無効な契約を前提とした請求は理由がないから、丙は丁に対し、未払分の実施料の支払いを請求することはできない。
以上



【備考】
時間 1.5h
枚数 3.5p


・問題提起を短くしてみた
「問題の所在」部分が長過ぎるとの指摘を受けたので、意識的に短くしてみました。端的に論点の摘示をするのと、何故本件で問題になるのかも書き添えるのと、どっちが良いんでしょうかねえ。

・技術的範囲
用途発明も問題になっているのかなと思ったので、厚めに論じてみました。出題趣旨などを見ると、技術的範囲については書いた方が良いけれど用途発明であることを意識しなくても良いという感じのようです。

・専用実施権を設定した特許権者の権利行使
答案では、「68条ただし書は専用実施権者の実施範囲について特許権者の失権を規定している」としていますが、「失権」というのはちょっと強すぎる言い方なので、もう少しマイルドにした方が良いとの指摘を受けました。一番確実なのは、条文をそのまま引用することでしょう。
権利行使を肯定する理由については、文意が分かりにくい部分があると言われました。もう少し明瞭な表現にするよう工夫したいです。

・ライセンシーによる無効審判請求
問題の所在を明確化することを心掛けました。設問2-1は、論点に気付ければ良い問題だと考えたからです。

・特許無効と不当利得
特許の無効が遡及することを除けば、概ね民法の問題ですね。
民事系で錯誤無効が出題されたら、もう少しきちんと検討しなければならないでしょうが、結構さらっと流しているところがあります。
この年の採点実感かは記憶がありませんが、知財法も民法の特別法なので問題に出すのは当然というようなことが述べられていたと思います。ほかの過去問にもほぼ民法な設問があります。今後もこような出題傾向が続くことを念頭に置き、試験本番で戸惑わないようにしたいところです。
過去問検討 * 20:50 * comments(0) * trackbacks(0)
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平成21年新司法試験知財法(著作権法)
設問1−1
第1 著作者人格権に基づく請求
1 公表権侵害(著作権法18条1項。以下、条数のみの引用は同法を示す。)
 乙は、絵画Aを知り合い十数名に見せているため、甲の公表権を侵害する。なぜなら、知り合い数十名は多数といえるため、「公衆」に提供したことになるからである。
 なお、乙は未公表である美術の著作物の原作品の譲渡を受けているため、展示につき甲の「同意」があると推定されうる(18条2項2号)。しかし、本件贈与については再譲渡禁止・公表禁止特約が付されているため、かかる推定は覆滅される。
 よって、公表権侵害を根拠として損害賠償請求(民法709・710条)ができる。
2 氏名表示権侵害(19条1項)
 乙は絵画Aに著作者である甲の氏名を付さず、また、丙に対して自身がAの作者である旨告げている。かかる行為は、甲の氏名表示権を侵害する。
 よって、氏名表示権侵害を前提として損害賠償請求(民法709・710条)をするとともに、名誉回復措置として(115条)、Aの作者が甲である旨、丙などに通知するよう求めることができる。

第2 著作権に基づく請求
1 展示権侵害(25条)
 上記と同様に、乙による展示行為は甲の展示権を侵害する。よって、かかる侵害を前提に損害賠償請求ができる。
2 譲渡権の非侵害(26条の2第1項)
 乙が丙に絵画Aを譲渡しているため、譲渡権侵害が問題となる。
 しかし、Aについては甲乙間で一度譲渡されているから、かかる譲渡をもって権利が消尽し(26条の2第2項4号)、それ以後のAにかかる譲渡行為は適法ということになる。よって、乙は甲の譲渡権を侵害しない。
 したがって、譲渡権侵害を理由とする請求はできない。

設問1−2
第1 著作者人格権に基づく請求
1 公表権侵害
 丙は、Aに依拠して作成した彫刻Bを展示している。かかる行為は、「同意を得ないで公表された著作物」を「原著作物とする二次的著作物」を公衆に提供したものといえる。よって、甲の公表権を侵害する。
 しかし、丙はAの作者が乙であると信じて乙の許諾も得ている。無方式主義を採用する著作権法で著作者又は著作権者の確認を義務付けるのは酷であるから、Aの著作者を知らなかったことにつき丙の過失はないとすべきである。
 よって、丙に故意・過失はなく、損害賠償請求はできない。
2 氏名表示権
 丙はBの展示に際して、Bの原著作物の著作者である甲の氏名を表示していない。そのため、氏名表示権を侵害している。
 しかし、上記のとおり、丙には故意・過失がないから、損害賠償請求も名誉回復措置等の請求もできない。
3 同一性保持権
 丙は甲の意に反して甲の著作物を改変してBを作成したから、同一性保持権を侵害している。
 しかし、やはり故意・過失がないので、損害賠償請求はできない。

第2 著作権に基づく請求
1 翻案権侵害(27条)
 丙は甲の許諾なくAの著作物に依拠した作品Bを作成しているから、甲の翻案権を侵害している。
 しかし、故意・過失がなく損害賠償請求権は認められない。
2 展示権侵害(25条)
 甲は28条により、Bの著作物の利用に関する原著作者の権利を有しているから、Bの展示行為は甲の展示権侵害を構成する。
 しかし、丙に故意・過失はなく、損害賠償請求はできない。
3 譲渡権侵害(26条の2第1項)
 前記のとおり、甲は28条を介してBにかかる譲渡権を有する。また、Bは丙丁間ではじめて譲渡されており、消尽の問題は生じない。
 よって、丙の譲渡行為は譲渡権侵害になるが、故意・過失がなく、損害賠償請求はできない。


設問2−1
第1 頒布権侵害(26条2項)
 映画Cには、Aの著作物に依拠して作成された彫刻Bが移っている。そのため、甲は28条を介してBにかかる頒布権を有する。なぜなら、Bは「映画の著作物において複製されている著作物」といえるからである。

第2 戊に対する主張
 よって、甲は戊に対して頒布権侵害を前提に、DVD頒布行為の差止めを請求する。

設問2−2
第1 直接感得不能性
1 「映画の著作物において複製されている」(26条2項)といえるためには、複製されているとされる著作物の創作的表現を直接感得できるといえる程度に映画に映っていなければならない。
2 本件では、Bが移りこんでいるのは10秒程度であり、その創作的表現が直接感得できるほど再現されているということはできないと反論しうる。

第2 公開の美術の著作物の利用(46条)
 仮に、創作的表現が直接感得できるとしても、Bは市内公園という一般公衆に開放されている屋外の場所に恒常的に設置されているのだから、自由に利用できると反論することが考えられる。

設問2−3
第1 直接感得可能性
 BがCに映っているのは10秒程度であっても、美術の著作物なので一目見るだけでもその創作的表現は感得できるはずであると再反論する。

第2 46条6号該当性
 また、確かにBの著作物は屋外に恒常的に設置されたものとして自由利用の対象となりうる。しかし、映画Cのラストシーンという重要な場面でBを映していることからすると、Bの著作物の複製の販売を専ら目的にしているということができる。
 このような利用態様は、46条6号の除外事由にあたり、違法である。
 そのため、戊のDVD頒布行為は甲の頒布権侵害にあたるとの再反論が考えられる。
以上



【備考】
時間 1.5h
枚数 4.0p


・紙幅はぎりぎり、時間はいっぱいいっぱい
平成21年は書くべきことが鬼のように多いという印象です。4ページいっぱいに書いています。多分本番だったなら、途中答案になってしまったと思います。現に初めて解いたとき、設問2の途中までになりました(本答案で3回目)。

・著作物性、著作者性
この答案では、絵画Aの著作物性及び甲の著作者性については全く触れていません。紙幅が足りないので、設問上当然に認定できるところは省いていくという戦略をとったためですが、一応簡単に触れておいて損は無いと思います。

・設問1-1 甲の乙に対する氏名表示権侵害の主張
答案では「乙は絵画Aに著作者である甲の氏名を付さず、また、丙に対して自身がAの作者である旨告げている」ことが、氏名表示権を侵害するとしています。
後者について、潜称者に対しては氏名表示権を行使しても問題ないと思われます。しかし、前者については微妙です。Aにかかる甲乙間の譲渡時に氏名表示権を行使していたとも考えられるからです。
この答案ではそこの逡巡を若干ごまかしています。

・設問1-1 甲の乙に対する展示権侵害の主張
ここで展示権を侵害するとしているのは誤りです。なぜなら、乙は45条1項の「所有者」としてAの展示をすることができると考えられるからです。
よって、ここは、「債務不履行違反を問いうることは別として、展示権侵害にならない」とすべきでした。2回も答案を書いていて何をしているんだ、という感じですね。反省。

・設問1-2 甲の丙に対する請求
答案では、損害賠償の成否だけ論じていますが、みなし侵害(113条1項2号)に基づく差止請求(112条)も検討すべきでした。丙に侵害につき過失がないと認定していたとしても、甲が警告していたり疎明したりすれば、113条1項2号の知情要件を充たすと考えられるので、彫刻Bの廃棄請求等を肯定して良いと思われます。

・設問1-2 丙の過失
損害賠償請求のところで、「丙はAの作者が乙であると信じて乙の許諾も得ている」として、過失がないと認定していますが、(答案上はともかく実務なら)このような認定は困難です。
また、「無方式主義を採用する著作権法で著作者又は著作権者の確認を義務付けるのは酷であるから、Aの著作者を知らなかったことにつき丙の過失はないとすべきである」としていますが、このような理由付けだと、すべての侵害に過失が認められなくなってしまうので、別の理由付けを持って来た方が良いとの指摘を受けました。

・設問1-2 甲の丙に対する展示権侵害の主張
答案には全く書いていませんが、実は、玩具店の店内が「公」といえるかが、明文なく問題になると思います(「公衆」の定義は明文がありますが、「公」はないと思います。)。しかし、出題趣旨などを見ても、そんなことは論じてほしくないみたいです。
実務家の某先生が仰るように、新司法試験には出題者の意図しない問題が複数潜んでいます。それに気付くのはおそらく実力のある証拠でしょうが、本番ではじめて気付くと答案が書けなくなったり、配点の無い部分を厚く論じてしまったりします。だからこそ、「試験を受ける前に問題に気付き、大いに悩んでおいて、本番では知らん顔する」対応が必要となります。

・設問1-2 甲の丙に対する譲渡権侵害の主張
答案では消尽を否定しています。これは(答案上は書けませんでしたが)、丙が、26条の2第2項4号にいう「許諾を得た者」とはいえないことを論拠としています。しかし、同号にいう「許諾を得た者」がライセンシーをイメージして立法されたとすれば、話は変わってきます。
よって、ここでは消尽を肯定する方が無難かなと考え直しています。

・設問2-1 甲の戊に対する頒布権侵害の主張
Bを「映画の著作物において複製されている著作物」(26条2項)にしましたが、単純に複製権でも良いのではないかという指摘を受けました。

・設問3 写込み
設問3については、直接感得できるかどうか(「雪月花事件」)と屋外に恒常的に設置された美術の著作物であること(「はたらくじどうしゃ事件」)についてを指摘できれば良いのではないでしょうか。これらに加えて、権利濫用もありかもしれません(再反論が水掛け論になりそうで書きにくいですが)。
直接感得可能性については、裁判例が書道のとめはねや墨の掠れ具合を問題にしていた事案だったので、彫像の場合だと違う結論かもしれない、ということを再反論部分で出せると好印象になると思います。
美術の著作物の利用については、販売目的を再反論に使いましたが、この規定はポストカードやミニチュアなどを想定した規定であり、映画のラスト・シーンに出てくるという本件では、ちょっと苦しい主張だと思います。「専ら」という文言との関係もありますし。
もう少し説得的な再反論を書きたかったですが、時間とスペースの制約を考えれば、これくらいが限界かもしれません。
過去問検討 * 15:10 * comments(0) * trackbacks(0)
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平成21年新司法試験知財法(特許法)
設問1−1
第1 問題の所在
 A社及びB社は、甲又は乙に対してα試薬の発明(以下、「α発明」という。)にかかる特許権(以下、「特許権α」という。)につき、設定登録前であれば出願人名義変更を、また、設定登録後であれば持分移転請求をすることが考えられる。
  しかし、その前提として、(顱砲修發修皃組明が職務発明(特許法35条1項。以下、条数のみ引用する場合は同法を示す。)に該当するかが問題となる。な ぜなら、A社及びB社の勤務規則には特許を受ける権利の承継につき定めがあるが、かかる規定は職務発明でなければ無効だからである(35条2項)。
 また、(髻某μ拡明であるとしても、甲及び乙の「同意」(33条3項)があるといえるか、α発明の特許を受ける権利が共有に係るため、問題となる。

第2 職務発明の成立
1 職務発明は、〇藩兌堙が、⊇抄醗等の、6般拡楼呂紡阿垢詒明で、かつ、づ該発明行為が職務範囲に属する場合に成立する。
2 本件では、A社及びB社が、⇔昭劼僚抄醗甲・乙に、試薬の共同開発という事業につき、ざζ嘘発を命じていることから、α発明は職務発明であるといえる。

第3 同意の不存在
1 しかし、職務発明が成立し両社勤務規則によってα発明の特許を受ける権利が承継されうるとしても、かかる移転につき甲乙が同意したとの事情はない。
2 そもそも、特許法が共有に係る権利につき、共有者の同意を要求しているのは、共有者の知らない間に実施能力の高い者に持分が移転されるなど、権利者に予期せぬ損害を与えないようにするためである。
 そうであるとすれば、33条3項にいう「同意」は黙示のものでは足りず、明示的にされる必要がある。
3 よって、明示的同意のない本件においては、特許を受ける権利はA社及びB社に承継されていない。したがって、A社及びB社はα発明にかかる通常実施権の確認請求のほかは、特に請求できることはない。

設問1−2
第1 問題の所在
 B社に対して、甲がα発明の実施にかかる請求をする場合、(顱剖ν者乙を原告にすることなく、甲単独で請求できるかが問題になる。なぜなら、特許法には著作権法117条のように権利侵害における単独行使を規定した条文がないからである。
 また、(髻房詑両紂甲の請求が認められるかも問題となる。

第2 単独請求
 共有に係る特許権の権利侵害について、特許法上明文はないが、差止め及び損害賠償の請求は保存行為(民法252条ただし書)であると考えられるため、単独請求できるとすべきである。
 したがって、甲単独での請求は可能である

第3 通常実施権の成立
 しかし、α発明は職務発明であるから、乙の持分につきB社に通常実施権が成立している(35条1項)。
 よって、B社による実施は適法であり、甲は何ら請求できない。


設問2
第1 問題の所在
 α発明は丙によって冒認出願されているため、その出願は本来拒絶されるべきであり、仮に特許権が設定登録されたとしても無効である。しかし、無効にしたとしても真の権利者である甲・乙に権利が移転されるわけでもないし、再出願をしても新規性を喪失し無効である。
 そのため、甲乙は(顱棒瀋蠹佻秦阿砲いて出願人名義変更手続請求をすること、(髻棒瀋蠹佻晋紊砲いて、持分移転登録請求をすることを検討すべきである。
 他方、A社B社は、冒認者丙による出願を理由に無効を主張することになるため、123条2項にいう「利害関係人」にあたるといえるかが問題となる。

第2 甲乙の請求
1 設定登録前
 甲乙は、/燭慮⇒者であることの確認請求にかかる確定判決を受け、⊆身も出願しているのであれば、出願人名義変更ができる。
2 設定登録後
(1) それに対して、設定登録後は‘探を受ける権利と設定された特許権との間に連続性があり、⊃燭慮⇒者が出願機会を生かしていなかったなどの事情がなく、F探権の権利帰属のみが専ら争われている場合には、移転登録請求ができる。
(2) 本件では、・組明に関する権利として連続性を有しており、甲乙は丙が冒認出願をするとは思っていなかったので自ら出願する機会はなく、F探権αの新規性・進歩性について争いはないので、移転登録ができる。
(3) この点は、丙ではなく甲が設定登録を受けた場合も同様である。

第3 A社B社の請求
1 冒認出願の場合
 設定登録の前後を通じて、A社及びB社は、冒認出願(123条1項6号)を理由として、無効審判請求をしうる。その際、「利害関係人」に限り請求できるものとされているが、冒認者丙による出願の場合、A社B社はこれに該当する。
 なぜなら、A社B社は通常実施権によりα発明を実施できたはずであるのに、冒認者が出願したことで差止めや損害賠償請求を受ける可能性が生じているからである。
2 甲単独出願の場合
 しかし、甲が共同出願義務に反して出願した場合(123条1項2号)には、A社B社は「利害関係人」にはあたらない。
 なぜなら、甲が単独で権利者になったとしても通常実施権が成立することに変わりないのであり、実施が可能だからである。
 よって、A社及びB社は何ら請求できない。
以上




【備考】
時間 1.5h
枚数 3.8p

・問題提起が長い?
「問題の所在」部分が長過ぎるとの指摘を受けました。今後の課題です。しかし、あまりに簡潔すぎると論点主義的との誹りを免れないように思うので、案配が難しいところです。

・論点は拾えている
この答案で2回目くらいなので(答案構成のみを入れると3回?)、時間内におおよその論点を拾えていると思います。本番ではこんなに書けないでしょうし、論点も落とす可能性が高いです。これくらい冷静に書けたらな、と思います。

・難化傾向
平成21年は、著作権法パートもそうですが、書くべきことが非常に多いです。場合分けも要求されているので、答案構成が難しい問題になっていると感じます。

・条文が大切
新司法試験は、科目にもよりますが説の対立というよりは「いかに事案を解決するか」が問われる傾向にあります。知財法の場合、特に著作権法がその傾向が顕著だと思います。ひたすら的確な条文の指摘とあてはめという感じです。
対して、特許法はやや論点といわれるものを意識した問題になっていると感じます(職務発明、共有にかかる特許権の行使、冒認出願との関係など)。しかし、だからこそかえって条文の摘示とその趣旨の把握に重きを置かねばならないでしょう。
過去問検討 * 19:20 * comments(0) * trackbacks(0)